はじめに|売れない理由は“営業力”ではない
「営業が頑張っているのに、なぜ売れないのか?」
この問いを抱える中小企業経営者は少なくありません。営業資料を整え、トークを磨き、広告も出しているのに、なぜ契約が取れないのか。その原因は、営業“個人”のスキルではなく、実は“事業ポジショニングの弱さ”にあることがほとんどです。
ポジショニングとは、あなたの事業や商品が、顧客の心の中でどのように認識されるかという「印象の位置取り」です。
言い換えれば、「どのような印象で、誰の、どんな悩みの“第一想起”になるか」を決める戦略です。
本記事では、営業成果を劇的に変える“ポジショニング戦略”の考え方と、実行ステップ、そして実際に営業が加速する仕組みを解説していきます。
第1章:なぜ今、“ポジショニング”が営業成果のカギになるのか?
顧客は「違い」ではなく「意味」を買っている
市場には似たような商品・サービスが溢れています。そんな中で、顧客が選ぶ基準は「違い」よりも「意味」、つまり「これは自分にとって必要だ」と感じさせられるかどうかです。
これは営業トークではどうにもなりません。営業に入る“前”の時点で、顧客の頭の中に、
- 「◯◯ならあの会社」
- 「この悩みはあの商品が良いらしい」
という“心のポジション”を築けているかどうかで、商談の勝敗はほぼ決まっています。
売れる企業は「ポジショニング」に成功している
営業が強い会社に共通しているのは、実は営業マンが優秀なだけではなく、「市場の中での立ち位置=ポジショニング」が極めて明確であるということ。
「誰に・何を・なぜ・どうやって」提供しているのかが、顧客にとって一目瞭然であるからこそ、営業がスムーズに進むのです。
第2章:ポジショニングが弱いと営業が止まる「4つの兆候」
- 顧客が製品を“認知”していない
- 競合に“勝てていない”
- 顧客が“信頼していない”
- メッセージが“届いていない”
ポジショニングがうまく機能していない企業には、これらのサインが現れます。どれかひとつでも該当するなら、ポジショニングの見直しが必要です。
第3章:「売れる事業」に不可欠な“3つのポジショニングスタイル”
- 競争のポジショニング
競合よりもなぜ優れているのかを示す。
例:「価格は同じ。でも、導入スピードは3倍早い」 - 製品のポジショニング
製品そのものの独自性を訴求する。
例:「たった5分で完了する自動化ツール」 - 市場のポジショニング
新たな市場カテゴリをつくり出し、競合を無効化する。
例:「営業代行ではなく“契約獲得型実行代行”」
第4章:ポジショニング戦略の「10ステップ設計法」
- 競合調査を行う
- 顧客インタビューで「本音のニーズ」を探る
- 自社の強み・弱みを棚卸しする
- 顧客の“選ぶ基準”を明確にする
- 「誰に・何を・なぜ・どうやって」の軸を明文化する
- キャッチコピーを10案つくる
- 市場に響くか、テストを行う(LPや広告)
- 社内に浸透させる(営業資料・説明フレーズ)
- 顧客との接点に一貫性を持たせる(Web・商談)
- 毎年アップデートする文化をつくる
第5章:会社と商品、どちらを先にポジショニングするべきか?
答えは、「両方同時に設計する」です。
- 会社=信用のベース(土台)
- 商品=購買のトリガー(きっかけ)
この2つは相互に作用し合い、どちらが欠けても成果は安定しません。
第6章:実践事例|ポジショニング再設計で営業成果が激変した企業
事例:探偵フランチャイズ開発(株式会社HAL)
半年間契約ゼロだったが、「探偵×IT企業」「営業実働あり」「集客は本部」が刺さり──
- 初月で契約獲得
- 半年で年間目標達成
- 他の探偵社のFCとの明確な強みを発信し、比較されても勝率100%に
営業で勝てる理由が明確になれば、“売る”のではなく“選ばれる”営業になります。
ポジショニング解説:弊社運営サービス「ネクストギア」
「ネクストギア」は、従来の営業代行業界にある以下のような課題に対して独自の立ち位置を確立しています。
- アポだけ提供して終わる営業代行が多い
- いきなり長期契約で柔軟性がない
- アポの質が悪くてもなかなか修正してくれない
- 売り上げまでを見てくれない
これに対し、ネクストギアでは──
- 契約獲得まで一貫して実行
- 上限顧客数を設定し、1社ごとの成果に集中
- 有料でのお試し期間を用意し、導入前の不安を解消
- 短期契約(3ヶ月単位)でもOKという柔軟さを確保
この「契約獲得型営業代行」という明確なポジショニングにより、単なる営業支援ではなく“売上のパートナー”として、決裁者からの信頼を獲得しています。
第7章:営業が加速する「営業トーク」はポジショニングから始まる
営業トークや資料を磨くより前に、「ポジショニングベースの構成」に変えるべきです。
Before:「弊社は◯◯を提供しています」
After:「多くの企業が◯◯に困っていますよね。弊社は◯◯な理由から、解決率90%以上を実現しています」
これが、“説得”から“共感”に変えるセールスピッチです。
第8章:ポジショニングが“伝わらない”企業に共通するミス
どれだけ優れたポジショニングを設計しても、社内外への“伝え方”が間違っていれば意味がありません。よくある失敗パターンは以下の通りです。
- 専門用語が多くて顧客に伝わらない
- 社内で共通言語になっておらず、担当者ごとに説明が違う
- 価格・納期・実績など“表面的な情報”ばかり話している
ポジショニングは、「言語化」と「一貫性」が命。全社員が“同じ言葉で語れる”状態を目指しましょう。
第9章:営業資料とLPは“印象設計”で劇的に変わる
営業資料やLPは、ポジショニングを“形”にする重要なアウトプットです。特に意識したいのは次の3点です。
- ファーストビューで“誰向けか”が一目で分かるか?
- 他社との違いが“事例や構造”で伝わっているか?
- 問い合わせ後の体験(導入プロセス)が安心できるか?
これらが整うことで、LP閲覧から商談→成約までの流れが滑らかになり、営業生産性が大きく変わります。
第10章:SNSと広告も「印象の一貫性」がカギ
X(旧Twitter)やYouTube広告、Meta広告など、あらゆる接点において“同じ印象”を与えることが重要です。
どこを見ても「なるほど、これは◯◯の会社ね」と認識される状態を作ることで、商談時の説得コストが劇的に下がります。
逆に、一貫性がなければ「結局どんな会社なのか分からない」と不信を招き、営業効率が悪化します。
第11章:社長が語る「原体験」もポジショニングになる
意外と見落とされがちですが、経営者自身の“ストーリー”も強力なポジショニング要素になります。
- なぜこの事業を始めたのか?
- なぜその分野にこだわるのか?
- どんな人に本気で貢献したいのか?
これらは、理屈ではなく感情に届く要素です。 “人に売る”営業には、数字以上に「人の想い」が響きます。
第12章:自社の「当たり前」が、実は最大の差別化要素
企業は自社の強みを“当たり前”だと感じがちですが、それが競合にない強烈なポジショニングであることも多々あります。
例:
- 「全て自社で完結してる」
- 「対応スピードが異常に速い」
- 「顧客とのチャット返信が365日・年中無休で対応している」
こうした“他社では難しいけど、自社では当たり前”のことを明確に言語化し、前面に出すことがポイントです。
第13章:ポジショニングは「構造」で設計し「感情」で伝える
最後に、最も本質的な考え方をお伝えします。
ポジショニングは、構造的に設計し、感情的に届けるものです。
- 構造=誰に/何を/なぜ/どうやって
- 感情=顧客の“なりたい姿”と“避けたい苦労”への共感
この2軸が揃って初めて、顧客の心に残るポジショニングが完成します。
営業は、商品を売る仕事ではありません。印象を届ける仕事です。
“印象”が変われば、“成果”が変わる。
この構造と思考を、今日からぜひ取り入れてみてください。
第14章:まとめ|印象が変われば営業は変わる
営業は「説得する技術」ではありません。
「最初から“欲しい”と思ってもらえる印象をつくること」──それが営業成果を根本から変える唯一の方法です。
その中心にあるのが、ポジショニング戦略。
ぜひ今、自社の立ち位置・強み・伝え方を見直し、営業活動を“加速”させる仕組みを整えていきましょう。
あなたの会社の営業を変えるのは「営業マン」ではなく「印象」です。